のろやま

身の回りの小さな発見と驚きを見つける旅に出かけたい

「きりぎりすの山登り」 金子みすゞ


朝露の中あぜ道で小さなバッタに出会い、この詩を思い出した。
ちょっと不思議で寂しそうな詩。
私が持っている朗読の詩集の語りがまたよくて、大好きな詩の一つです。
金子みすゞの世界「朗読の旅」

■「きりぎりすの山登り」 金子みすゞ
きりぎつちよん、山のぼり、
朝からとうから、山のぼり、
   ヤ、ピントコ、ドツコイ、ピントコ、ナ。

山は朝日だ、野は朝露だ、
とても跳(は)ねるぞ、元氣(げんき)だぞ。
   ヤ、ピントコ、ドツコイ、ピントコ、ナ。

あの山、てつぺん、秋の空、
つめたく觸(さは)るぞ、この髭(ひげ)に。
   ヤ、ピントコ、ドツコイ、ピントコ、ナ。

一跳ね、跳ねれば、昨夜(ゆうべ)見た、
お星のところへも、行かれるぞ。
   ヤ、ピントコ、ドツコイ、ピントコ、ナ。

お日さま、遠いぞ、さァむいぞ、
あの山、あの山、まだとほい。
   ヤ、ピントコ、ドツコイ、ピントコ、ナ。

見たよなこの花、白桔梗、
昨夜(ゆふべ)のお宿だ、おうや、おや。
   ヤ、ピントコ、ドツコイ、ピントコ、ナ。

山は月夜だ。野は夜露、
露でものんで、寝ようかな。
   ヤ、ピントコ、ドツコイ、ピントコ、ナ。