霞桜が咲き始めると、1ヶ月に及ぶ桜の季節は厳かに終わりを迎える。
淡い水彩画のような、桜の風景が私は一番好きだ。
若草色に淡い桜色を混ぜ合わせた、このコントラストこそ、春の景色のフィナーレにふさわしい。
そして毎年楽しみにしている、家の向かいの大きな霞桜が今年も花開いた。
大きな、大きな花火のように。
風に揺れ、花びらを散らし、静かに時が過ぎていく。
いつまで見ても、飽きることのない景色がそこにある。
単純ではない、複雑で刻々と変化をしていく者達の集合体。
色は人を招き、引きつけ、魅了する。
数千、数万、数億の命ある者達が醸し出す色の世界。
人がまねようとしても、決して作り出すことの出来ない色。
霞の色が薄れていくと、その先にゆっくりと夏色がやってくる。