女木島、男木島の海の石垣の翌日、今度は山の石垣散歩に連れ出していただいた。
高開(たかがい)の里は、芝桜で埋め尽くされ多くの人で賑わうが、鶯の鳴き声もまだ練習段階。
山里は、まだ静けさの中にあった。
やっぱり静かなのがいいねー
「おはようございます。」
「おはよう、お茶でも飲んでいくかね」
家から出てきた初老の老人が声をかけてくれた。
今日はね、谷向の寺で集まりがあって、息子も帰ってきているんだ。
しばらくするの息子さんが帰ってこられ、奥さんも交えていろいろお話を聞かせていただいた。
「山が迫ってくるんだよ」
昔は畑だった場所が年々山に飲み込まれていく。
山と接して暮らしている人々は山の厳しさを知り、優しさを知っている。
ここは、20センチも掘るともう岩が出てくるんだよ。
その岩を掘り出し、砕いて石垣にする。
そうやってこの里を作り伝えてきた。
数十年前からは、若者を迎えて一緒に石垣を積んでいる。
若者は結婚し、子供が産まれまたこの地に来てくれたり、文をくれたりする。
そう笑顔で教えてくれた。
そこには、かけがえのない誇りのようなものが感じられた。