少しずつ雪が雨に変わってくる。
三寒四温を繰り返し、すこしづつ雪が溶けて山潤み始める頃
朝、麓の石畳はまだ乾ききっておらず、山中は靄が漂っていた。
見上げる先の果無峠はまだ白い雪に覆われている。
「蟻の熊野詣出」と呼ばれ、とぎれなくこの道を通ったであろう人々はなにを願う為に詣でたのだろう。
なぜか石畳に引かれるのは私だけではないのだろう。
上へ上へと続く石畳を踏みしめ、一歩一歩信じる神の元を目指す旅。
今も昔も、人は熊野を目指す。
なにかを見つけるため、何かを感じるため、熊野を目指す。
遙か彼方へ熊野の鳥居が見えてきた。