人は森に畏怖の念を感じていた。
確かに、なぜか森にはいると、ぞくぞくっと何かに見られているよに感じることがある。
なぜか、森にはいると五感が敏感になる。
風の音、木々が触れ合い、鳥が枝から枝に駆け回りながら近づいてくる。
かくれんぼしている虫たちも、なぜか不思議に目に飛び込んでくる。
命をつなぐ営みが心に響く。
天から降り注ぐ、光のシャワーに木々たちが喜びの声をあげるのが聞こえる。
昨日まで空から降り注いだ大量の水は、山筋を伝い流れ、集まった水は、
数キロは離れているであろう谷向のこちら側にも響きわたる。
水は、途方もないほどの、長い長い時間をかけて、台地を削り谷を作る。
また、一瞬にして地を崩し押し流す、巨大なうねりの元となる。
ここにいると、人の力なんて本当に小さなもので、米粒のような存在なんだとつくづく思う。
謙虚に、そっと寄り添うように自然と付き合う。
そのようにして、古から人は森と付き合ってきた。