少し遅い平日の登山口は、私のほかに誰もいなかった。
いらっしゃい。
声のするほうを見ると、 イチヨウランの親子が、よくきたねと微笑んでくれていた。
標高1800mの濁河温泉登山口
近くには、アスリートたちがトレーニング励む、高地トレーニングセンターもある。
先を急がないし、静かな森に静かに足を踏み入れていく。
木立の隙間から、雪をかぶった御嶽摩利支天がこちらを見下ろしていた。
御嶽山は、最高峰の剣が峰に続き、摩利支天、継母山、継子岳と複数の山塊が連なる山。
今回は、飛騨頂上を目指してゆっくりと昇っていく。
森に入ると、そこは苔と落花し独特のつぼみの形をしたバイカオウレンの森だった。
これほどの群落は見たことがない。
もう1か月はやくくれば、満開のバイカオウレンのお花畑に出会えるのか。
また楽しみが出来た。
この道は、飛騨側から唯一開かれた、御嶽振興の道とのこと。
ところどころに、人々の息遣いを感じる道でもある。
雪が解け、厳しい火山の地の上に、ゆっくりとした時をかけ、大きな森が出来上がっていった。
時には、荒れ狂う流れに流され、幾度となく人を排除してきたが、それでもまた、人はここに戻ってくる。
なぜなんだろうねえ。
ちょんとつつくと、梅の花弁がはらりと散った。