ハイマツ帯に出た。
目の前に山塊が大きな手を広げてくるものを包み込む。
千切雲が風になびき、ベールをかけておしゃれを手伝う。
一歩一歩足を前に出すほどに、天に近づく。
稜線出ると、そこに五の池と呼ばれる池があった。
そばには、今夜お世話になる山小屋が到着の挨拶をした。
五の池は、夏になると消えてしまうとのことで、この季節姿を拝めないという。
小一時間、荷物を小屋にデポして、摩利支天を望む展望台へを散策することにした。
夕食は17:30からとのことで、一時間少しある。
頂に昇ると、摩利支天から継母へと続く御嶽の峰々に、雲海が遠くまで伸びていた。
振り返ると、五の池小屋は雲に覆われている。
流れる風に雲のベール。
刻々と変わる風景に見とれてしまう。
あ、
一匹のはぐれツバメが宙を待っていた。
おーい。
見えるか。
読んでみると、心が通じたのか、すーっこちらに近づいてきて挨拶をしてくれた。
はぐれツバメはしばらく弧を描いていたが、やがて遠くに飛び去って行った。
さあ、降りるか。