延々と続いた苔の森が突然に、ゴロゴロとした沢をたどる道に変化するころ
時折薄く雲がかかり始めた。
高山は急速に季節が進み始め、枯れ始めたアザミの花に、ミツバチが必至で頭を突っ込んで、残り少ない食べ物をかき集めていた。
あと、1-2週間もたてば初雪の便りが聞こえるかもしれない。
色とりどりに咲き乱れていた草花は一斉に消えていき、白一色の世界へと近づいていく。
夏のお祭りの最後の花火のように、あるものは輝く実を実らせ、
あるものは、葉を染め上げていく。
振り返ると、雲の上に出ていた。
夕闇が迫るまでには、宿につけそうだ。
日が陰り、谷が闇に包まれていく。
あれだけ長かった昼の営みが、秋が深まるにつれて夜が早くなってきた。
秋の山歩きは注意が必要だ。
季節の変わり目をきちんと感じて準備を怠らないようにしよう。
三ノ池を過ぎ、あの峰の上が今日の寝床だ。
山小屋があるというのは本当に安心できる。
あそこに行けば暖かい食事と寝床が待っている。
さあ、もうひと頑張り。