夏の伊吹山、春の藤原岳と言われる鈴鹿山系北部。
未知の山域へと足を踏み入れる。
鞍掛峠は、夜半から濃い霧で覆われていた。
雨はふらなくても霧があれば植物は水を得る。
芽生え始めた若葉いっぱいに霧を受け、空気中の水を受け取る。
山道のカタクリたちは、じっと眠っていたが、きっとこの後、雲は通りすぎる。
その時までゆっくりとお眠りなさい。
日と共にリズムを刻む。
それはとても大切なこと。
草も木も、全身で命を受け取っているから
見るものの心を揺さぶり、心をつかむ。
時間が止まった。
一瞬として同じ時はない。
この一瞬を精一杯に生きている者達が織りなす世界がここにある。