まだ残雪の残る高山は、遅い春を迎えていた。
次々と咲き誇る、草花に小さな小さな虫たちが忙しそうに集まっていた。
昼間の太陽に温められ、いっぱいに水分を含んだ空気が、よるの冷たい冷気に笹されて、地表で結露し朝露となり、小さな妖精たちは嬉しそうに笑っていた。
振り返ると、大きな立山の山々があたたかく見守ってくれている。
ゆっくりしていきなよ。
そう言っているようだ。
朝と夕方では当然見える風景は違うのは分かってはいるが、やはり美しい場所では、ゆるりと一晩明かすのが一番良い。
名残惜しいが、先は長い。
ゆるりと、下っていくことにしようかな。
朝日を背に浴びながら、昨日バスに乗り込んだところまで、花々を愛でながら、ゆる地と、降りていくつもり。
ちょうど、室堂~天狗平付近はあちこちでお花畑の中を歩いているような風景です。
良いタイミングだった。
なんといえばよいのだろう。
天上にこんな素敵な場所があるなんて。
荒々しく、厳しい台地だからこそ、木々は育たず、ここにしか住めない者たちが追いやられ、独自の進化を遂げている場所。
はるか昔に起こった地球の荒々しい変化が生み出した痕跡がまだまだ、色濃く残る場所。
そこは、天に近い場所だからこそ、人は山々に祈り、崇めてきたのだと、ここに立つと素直に理解できる。
さて、いくとするか。
また来るね。