のろやま

身の回りの小さな発見と驚きを見つける旅に出かけたい

愚直に守る

標高を上げていくと、雲の中に入るころ、森は黄色く染まり始めた。

雨の可能性もあるが、この霞の景色は晴れでは出会えない。

さあ、森を抜けてカレンフェルトと呼ばれる霊仙山の特徴的な

地形に出るが、ここからが急とになることを、事前に下見をしている

Tさんがみんなに伝える。

森を抜けると、具合が悪いことに雨が降り出しはじめ、風も強く吹き始めた。

森にいれば、木々が雨を防ぎ、風を和らげてくれる。

それに加えて、カルストの台地は粘土質で足元もぬかるみ、ぬれると滑る。

雲は風に吹かれ、めまぐるしく変化する。

変化の時は美しさも醸し出し、しんがりの私はしばし見とれる。

あっ、雲に一瞬窓が開いた。

ガラリ!

大きな音がすると、手をかけた大岩がはがれた音だった。

注意しないと危ない。

力をかける時は安定しているかどうかを気にしながらかけないと駄目ですよ。

雲がまとわりついてきて、視界が悪くなる。

一人が、しんどそうに喘ぎ始めた。

大量の汗をかき始め、先に行ってと言い始める。

これは無理だな。

引き返した方がよさそうだと思い始める。

リーダーより、風がよけれる窪地が登りきったところにあるという知らせが届く。

あそこまで行って、ご飯にして引き返すことにしよう。

そう判断したが、歩みはゆっくりだ。

ここでは風が強すぎる、

荷物を持とう。

空身で、ゆっくりと一歩一歩進む。

這うようにして窪地にたどり着き、シェルターとブランケットを被せ

防寒着を着せて暖を取る。

テルモスから注いだ白湯を飲まして一息つかせると段々と血色もよくなってきた。

これって、結構危なかったんじゃない。

本人は違うかもしれないが、内心そう思った。

運よく、雨も上がっており、湯を沸かし、あたたかい食べ物と飲み物を

とることも出来て本当に良かった。

もし、単独の初心者だけで来ていて、雨が降り続け、風も強く、窪地もなければ

どうなったのだろう。

ちょっとぞっとする。

装備を軽く考えるものとは一緒に行動したくない。

そう教えられてきて、愚直に守ってきた。

その言葉をこれからも守っていきたいと思う。

あと、その言葉を伝えるが、考えるのはあなたです。

どうしますか?