のろやま

身の回りの小さな発見と驚きを見つける旅に出かけたい

残り香

つい一昔前まで、人と祈りはとても身近だったが

いつの頃からか、ひとつ、またひとつと何かが忘れ去れていった。

崩れかけた階段が伸び、空の向こうに鳥居が見える。

あの向こうはどうなっているのだろう。

自然に飲み込まれ、波打った石段を登ってみる。

まだ、人の気配が残っていた。

ひっそりと、想いは細い糸でつながっていた。

こーん、こーんとさみし気な

お稲荷さんも自然に飲み込まれ始めていた。

自然は強い

あっという間に、人の気配の飲み込んでしまう。

人の匂いを希薄にしていく。

目を閉じ、耳を澄ますと

残り香のようにかすかな匂い、音が聞こえてくる気がする。

ねえ、そんな気がしない?