気の早い鳥の声とともに夜が明ける。
森の生き物たちは早起きだ。
もうすぐ夜が明けるのが分かるのだろう
今日一番を飾るのは誰かな。
一つの声が始まる。
コーヒーを沸かしその時を待つ。
空が明るくなり始めるとその演奏会はピークを迎える。
目を閉じて谷にこだまする静かな演奏会を堪能する。
夜露に濡れ、うっすらと透き通ったサンカヨウや
朝から元気なキヌガサソウががおはようと笑いっていた。
小さな虫たちは、体温が下がる夜間じっとしていて、
お日様が当たるのをじっと待っている。
この小さな体で、冬を越す者もあるのには驚くばかりです。
朝露は雨が降らぬとも、毎朝きちんと水の恵みをもたらしてくれ
生き物たちにとって、大切なもの。
一番最初に動き始めるのは誰なんだろうとみていると、
花バチが一番最初に動き始めていた。
シラビソの谷を抜け、帰路に就く。
この大きな木たちは、私の南百、何千、何万いやそれ以上の
変化を見てきたのだろうな。
その話を聞いてみたいものだと願ってしまう。
いい谷だったな。
振り返ると、人を寄せ付けない白山の最深部の森の夜が
ゆっくりと開けていこうとしていた。