ただいま。
暖簾をくぐると、一瞬で時が巻き戻る。
築100年弱のちょっと傾いた家だけど、大工だった父があちこち手を入れていた。
そして、小さな私は手伝いがしたくて仕方がなかったのを思い出す。
この玄関も、昔は広い土間だった。
たしか土間だったころは、藁を編んでへたくそな草鞋を作って楽しんだな。
そして、祖父に藁の綯いの手つきの良いさに脱帽したものだ。
ピアノが置いてあった部屋には、姪っ子が書いたという漢詩が
父の手作り額に収められていた。
お腹すいたー
五目御飯作って待ってたよ。
妹も駆けつけてくれて、ワイワイと過ごすのが楽しい。
お互いの子供たちは大きくなりそれぞれの人生を歩み始めようとしている。
あとは邪魔をしないよう、そっと見守るだけ。
昨日、お父さんと準備しておいてくれたという、みんなの大好物のコロッケ
山もり、てんこ盛りに作ってくれていた思い出の味
これ、おいしいんだよな。
みんなで鍋をかこむ
当たり前のような時間は、当たり前ではない時間
意識して、大切にしないとあっという間に過ぎてしまう
おそばがいい、うどんにする?
そういえば、母はそばよりうどんが好きで、
昔からそばとうどん、両方あったな。
あーもうそばないー
娘がそう叫んでいた。
いい年越しだな。