早めに仕事を切り上げ都会の喧騒から抜け出した。
日が暮れた国道の温度計の表示は、いつしか20℃を下回り始めた。
開田の登山口から数キロの地点で適当な場をを見つけて寝床を作り、暖かなシュラフに潜り込んで耳を澄ませた。
冷え込んだ初秋の高原の朝
目が覚めると、暗闇から抜け出した御嶽の山が朝日に輝いてそこにあった。
今日は、北御嶽の開田道を歩いてみようと思っている。
朝日に背中を押され、森の入り口にたどり着く。
カサコソ
目の前を山鳥の夫婦が通り過ぎていった。
御嶽山は神様の山
入り口には鳥居がぽつんと参るものを待っている。
ゆっくりと祈りを捧げ、そっと門をくぐる。
少しだけお邪魔させてください。
訪れるものがほとんどいないという、北御嶽開田道
この道は、山頂まで6時間はかかるロングコースでもあり、訪れるものはほとんどいないという静かな道。
苔むした手つかずの森を感じることが出来る道でもあった。
一本の道が私を誘っているのを感じた。
おいで、おいで。
よく来たね。
高原の冷気にさらされ、生をまっとうしたものは静かに眠りに入ろうとしていた。
そして、ところどころに、次の世代へと命をつなぐ、生命の種が光っていた。
様々な偶然が重なり、ここに実を結ぶ
儚くも美しい命の種
なんと、あちこちに寳積がちりばめられている。
森は、今まで体験したことのないような景色があちこちに広がる場所だった。
次々に現れる命の雫
ちょっと口に含んでみる。
甘酸っぱいものや、ちょっと渋いもの。
甘ったるいもの。
いろいろ。
森の奥へ、森の奥へ
だんだんと、命の色が濃くなり始める気がする。