汽車に乗って日本海へと抜ける旅に出た。
木曽谷から松本と経由して白馬、小谷を通り糸魚川へと抜ける計画。
空と相談しながら行き先を考えてみようと、泊まる宿も決めずに出発した。
静けさ漂う、早朝の始発電車に乗り込み北へと向かう。
北へ北へと進んでいく。
いくつか目の駅で乗り込んできたサイクリストが3人も、ワクワクした表情をしながら自転車と一緒に降りて行き、次第に車内から人影が減っていく。
木曽の谷は、中津川~松本へとぬける古くから続く道
進む鉄道とR19が交差し絡み合う。
ガタンゴトンと揺れとともに記憶が蘇る。
あ、あの今越えた渓谷
まだ二十才前の時に、バイクで放浪していたときに、ホカ弁を食べたな。
あのスキー合宿の時は、調子にのって無茶な運転たけど楽しかったな。
あ、ねざめだ。
記憶って、何かのきっかけに、次々と連鎖して流れ出してくるという一面を持っていると聞いたことがある。
何十年も前の何でもない一瞬の光景が、つい昨日のように思い出される。
今思えば、日本全国、放浪し思い出の種を蒔いていたのかもしれない。
沢山の思い出が、日本のあちこちにちりばめられ、拾い集める旅。
そんな旅も悪くない。